リーダの立場で気をつける10のこと

こっちに来きてからというもの、久しぶりに「誰かの下について仕事をする」ってことをやっているような気がする。日本にいる時もそりゃもちろん誰かが上についていたわけだけど、かなり好き勝手やらせていただいていたので、誰かの下で働いているっていう意識が低かったように思う。それよりも一緒のチームのメンバにどう働きかけるか…ってことの比重が高かったと思う。

それがこちらに来たら、まぁ所謂下っ端ってやつですわ。自分の当時の英語レベルを考えればしょうがない。こちらの人たちはあまり上下関係・主従関係を重視していない人が多く、比較的誰とでも対等な関係が築きやすいとは思う。それでもやっぱりそこは契約上の問題もあり(プロジェクト内の個人個人のメンバがプロジェクトと交わす契約によって、各自の責任範囲や仕事範囲位が凄く詳細化されている)、上からの意見に従わなくてはならない場合が多い。そうすると今までとは違った視点でプロジェクト管理やら上の人達の仕事っぷりを眺めることが出来る。

今まで日本で感じていたこととこちらに来てから感じたこと。リーダに対して下の立場からやって欲しいと思うこと。それらを忘れないように書き留めておこうというのが今回の趣旨。いざまとめてみたら超フツーのことなんだけど、フツーのことをフツーに出来る人が果たしてどれほどこの世の中にいるだろうか?

リーダという立場以外にも、プロジェクトのメンバの一員として、または一社会人という立場としての個人的な心得的なものも色々とあるんだけど、今回はリーダ(大なり小なり下に誰かがつくという状況は誰にでもあると思う)に関してのみ書こうと思う。あくまでも個人的意見なんで深く捉えないように…。あと、「お前これ、出来てなかったじゃん!」ってツッコミが元プロジェクトの方たちから湧き上がる可能性がありますが、あくまでも理想論であり、今後そうなっていきたい…という願望も含まれているのであしからず。

1. 自分で出来ないことは人にやらせない
よくいるのが「自分に優しく人に厳しい」タイプの人。特に誰かのレビュー(ドキュメントなりコードなり)をしている場合に他人に厳しくなる場合が多い。厳しく指摘されるのは構わないんだけど、下の立場からみると、「いや、その前にお前がそれ出来てないじゃん」と突っ込みたくなると同時に、その人に対する信頼度も下がっていく…。なので、まず誰かにやって欲しいことは自分で率先してそれを示すことが大事だと。
ただ、気をつけて欲しいのはここで言っていることは「誰かスキルのある人に自分が出来ないことを頼むこと」とは違うということ。例えば自分がDBのスキルがなくて、誰かDBが得意な人にその作業をやってもらう…ってのは全く問題ない。ここで問題視していることは、お互いが同じ条件下で同じ作業をしている場合の話。

2.態度で示す
これは1とほぼ同じことなんだけど、下の人間は上の人間の行動を良くみているものなんです。それがスキだろうとキライだろうと。知らず知らずのうちにメンバに影響を与えている。それがいつの間にかプロジェクトの文化・色となってしまうことも多いと思う。なので、責任を持って色々と行動する必要がある。

3. 出来る限り情報を共有する
良いことでも悪いことでもメンバ間で出来る限り情報を共有するようにすると、メンバの立場からは色々と予測して動きやすくなったり、不吉な匂いを嗅ぎ分けたり出来るチャンスが増えたりする。特に全体的なスケジュールについては常に周知しておくべきだと思う。情報共有の明確なルールや仕組みを作っておくと良い。情報は透明化してタイムリーに提供し、ウソをつかない。今の日本にも言えること。

4.ルールやツールは慎重に
理想としてはみんなの意見を聞きながらルールやツールを次々に改善していくことが理想(つまりAgile・ふりかえり)だとは思うんだけど、プロジェクトの状況によっては、初期に決定した事項を変更することのコストが高くなりすぎて、非常に煩わしいルールやツールを変更せずに使い続けなければならなくなる場合があり、これは非常にストレスが溜まる。後で変え難いルール・ツール(フレームワークとかもそうだね)は慎重に決定しておく。

5.仕事を絶やさない・与えすぎない
メンバにきちんと仕事を割り振ることが出来ず(リソースの配分が出来ない)、何もしていない(できない)状況のメンバが生まれる場合がある。これは非常にムダなコストを生むのと同時に、メンバのモチベーションも激しく低下する。もし仕事の絶対量が足りないのであれば、別のプロジェクトに異動してもらうなり、教育に行ってもらうなりする。もちろんその逆に、過度に仕事を与えるのもNG。与えられた仕事を断れずに、与えられた分だけ自分を削って働き続けてしまうメンバがいることも忘れてはならない。

6.ビジョンを変えない
プロジェクトの状況によって色々とやり方を変えていくのはいいと思うが、ビジョンをコロコロ変えられるとメンバとしてはとても困る。どっちの方法を向いたらいいのかわからなくなり混乱する。常に明確なビジョンを持ち続けることが大事。もし変更する必要があるのであれば、なぜそれが必要かの論理的な説明が必須。

7.褒める、感謝する
プロジェクトを管理する立場になると、「プロジェクトメンバよりも自分の方が強い」と感じてしまう人が多い。あくまでもみんなが揃ってのプロジェクト。各人に感謝をしなければならない。
そして良いところを見つけて褒める。これはオーストラリアの人が超得意とするところであり、俺が不得意とするところ。こっちの人たちはこちらが恥ずかしくなるくらいとにかく褒めまくる。何にせよ褒められるとモチベーションが多少なりとも上がるものだ。だって人間だもの。

8.すぐに対処する
メンバから質問や相談をされたら可能なかぎりすぐに、出来ればその場で話を聞いて対処する。これはメンバの立場からみると非常に嬉しいし信頼度が上がる。

9.権限と責任を与える
各メンバに権限と責任を可能なかぎり委譲し、自分で何もかもやろうとしない。「立場が人を作る」という考えはあながち間違ってはいないと思う。適切な、本人のレベルよりもちょっと高い責任・権限を与え続けるのが良い。これが意外と難しい。「自分がやった方が簡単・確実だし説明する手間も省けるから俺がやるわ」となると、メンバが成長せず、モチベーションも上げることが出来ない。ただ、自分は何もしなくて面倒なことは何でもメンバにやってもらう…というのでも困る。これは上述した1や2とかの兼ね合いになる。

10.感情をコントロールする
プロジェクト管理者・リーダだって人間なので、その日の体調やプライベートのこと、他プロジェクトでの揉め事等でイライラすることがあるのはわかるが、そういったことは出来る限りメンバには見せない。感情的になって判断を間違っているリーダの姿は、メンバからすると非常に心もとなく感じてしまうものだ(特にアタマが良く論理的なメンバから反感を買いやすい)。常に冷静・論理的、それでいて明るく前向きに。あまり感情的に怒っている姿ばかりを見せていると、リーダを恐れて様々な意見が出にくくなる可能性もある。プロジェクトの雰囲気がリーダの醸しだす雰囲気とリンクしている場合が多い。

以上。ほら、やっぱりフツーのことだ。でもこれだけのことがちゃんと出来ている人を、誰かすぐに思い浮かべられることが出来るだろうか…?