日本企業のスピード感

昨日、Australiaの某IT企業(SaaSメインで主にUS顧客向けにサービスを展開する企業)に務める親友のプロジェクトがiPhoneアプリをリリースしたことを知った。今の御時世、iPhone向けのアプリをリリースなんて大した話じゃないかも知れないけど、もし自分の会社・部署が同じ事を達成するにはどのくらいの期間が必要だろう…と考えると、人材確保から意思決定のスピードまで、数多くの点で海外の企業には敵わない…と感じた。なぜそう思うのかをいくつか考えてみた。ちなみに以下ではウチの会社を典型的な日本企業として書いてるけど、日本企業の中にも、特に新しい会社はかなりのスピード感で物事を進める事が出来るので「日本企業」とひとくくりにするのは問題だと思うけど、そういう細かいことは置いておいて。

  1. 人材の流動性が低い。海外一般企業は多分ほとんどそうなんだろうけど、Australiaでは人材の流動性が高い。数年で転職が当たり前で転職を重ねることでキャリアを積んでいく。一年から数年で会社と契約を行う。使えないと判断されれば切られてしまうわけなので、彼らは日々、自分のキャリアを真剣に考えて行動している。とてもシビアだけど、いわゆる日本の「一度入ったらそこで働くのが一般的」な人たちと彼らとで、環境の差によりどれほどスキルに差が出来るだろうか?そういう流動性の高い市場は企業からすると、プロジェクト成功に必要な人材を必要に応じて外部から調達することが出来るという利点が。いわゆる日本の下請けとは違い、優秀な人材に発注するのではなく自社に雇ってしまうことが可能。いちいち会社間のやり取りが必要でそのやり取り自体に時間的・コスト的に負荷がかかる日本企業と、自社内に優秀な人材を流動的に増やせる海外の会社。果たしてこの状況で日本企業は太刀打ち出来るのだろうか…。
  2. プログラマの地位が低い。どういうわけだか日本ではプログラマは交換可能な人材と考えられていて給料も高くない。思うにプログラマ=単なる作業者で、設計書さえあれば誰でも同じ生産性で同じ物が出来る…と考えているんじゃないだろうか(そう考える「上流」の人たちは、大概自分で開発・プログラミングをしたことがない)。海外だと優秀なプログラマの重要性がわかっているので、優秀な人材には管理職以上の給料が支払われることがしばしば。日本のこの環境でプログラマを生涯の仕事として目指そうとする人がどれくらいいるだろうか。日本の優秀な人材はプログラマをやめて企画や管理職など、いわゆる日本的な「上流工程」へどんどん移動していくことになり、優秀なプログラマが一向に育たない。結果として海外の企業と比べると企画から開発までのスピードに大きな差が出る。
  3. 失敗のリスクが大きい。いわゆる失敗が許されない文化。失敗して学ぶことの重要性が認知されていない。失敗を恐れるがゆえに石橋を叩いて渡る、つまり企画・分析や設計にやたらとコストと時間をかける。そして時間をかけてリリースしたものは市場のニーズからかけ離れている…という結果に。市場が明確に見えている時代はそれで良かったかもしれないが、世界中の顧客を相手に非常に不透明な市場では動きが遅すぎる。

他にも色々とあるんだろうけど、とりあえずは上記3つで。