Total Solar Eclipse in Cairns

数ヶ月前、オーストラリアのケアンズ皆既日食(Total Solar Eclipse)があると何かで知った。皆既日食自体がとても貴重な現象で、何年に一度世界のどこかで見れるだけ。せっかくオーストラリアに住んでいるし、帰国を控えたこのタイミングで皆既日食があるってことで、後々後悔しないためにケアンズ行きを決定。飛行機やホテルはこの期間は値段が高いので、可能な限り旅程を引き伸ばして格安チケットを手に入れて(それでも普段よりも結構お高い)、どうにか当日を迎えた。

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ケアンズのホテルに滞在しているのはいいんだけど、問題はどこから皆既日食を眺めるか…。今回の皆既日食の始まり(つまり部分日食)は午前5:40頃。朝日が登ってちょっとしてから日食が始まるということで、それほど太陽が高くない位置で観測を開始することになる。色んなネットの情報を見てみると、海岸沿いは水平線近くに雲がかかりやすいので観測に向いておらず、標高の比較的高い場所での観測を勧めていた。


とはいえ、そういう場所ってのはツアーで観測するように設定されたりするし、そもそも土地がそれほど広くないので、当日行ってみたら混んでて車も停められませんでした…となったら最悪だし、それ以前に山道が渋滞して日食の時間に間に合わないってなったら目も当てられない。


そういうわけで、僕らが観測地として選んだのはPalm CoveというCairnsから車で北に30kmほど移動した海岸。理由は、海岸が広くて車を停める場所が数多くあり、当日それほど混雑はしないだろう…というのと、2日前にこの場所を訪れてランチをした際に、そこの店員がこの場所からの観測がベストだよって言っていたから。前述したとおり雲がかかる可能性は高いんだけど、まぁ見れなかったら見れなかったで仕方ないか、見れたらラッキーくらいの感じでいいかってことでPalm Coveに決定した。

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皆既日食の1時間前にはPalm Coveに到着。同じ目的で集まってきている車が結構停まってるけど、渋滞するほどじゃない。車を止めて海岸沿いにそそくさと移動し、海岸線から登る太陽を待つこと一時間。奇跡的に海岸線上は晴れていて朝日がバッチリ見えた。「こりゃいけるかも!」と期待が高まる。


が、現実はそう甘くはなくて、太陽が登った直後に分厚い雲に太陽は覆われてしまった。部分日食の開始時間が始まっても太陽が雲の下から現れない。空全体を雲が覆っているわけではないので、雲の間から太陽が出てくるのをひたすら待つ。
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そしたら!ついに出てきました、雲の下から太陽が!すでに太陽のかなりの部分が隠れているけど、皆既日食前に見事に現れてくれた。その姿はまるで三日月のよう。目の前で刻々と太陽が月に覆われていき、気温が徐々に下がりあたりも暗くなっていく。
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そして月が太陽に覆われる直前、月の裏からの微かに太陽の光が漏れ、美しいダイアモンドリングが…。
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次の瞬間、太陽がすべて月に覆われ、ついに皆既日食状態に突入!突入した瞬間、太陽がこれまでとは全く違った表情を見せる。まさに黒い太陽。まるで自分が地球ではない別の惑星にいるかのように錯覚してしまう。あたりも一気に薄暗くなる。
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皆既日食の時間はおよそ2分強。僅かな時間だけどこの間の雰囲気といったらなんとも説明しがたい。皆既日食って、単純に太陽が隠れてあたりが暗くなるだけだと思ってたんだけど、実際に味わってみるとそれをはるかに超えた、なんとも言えない幻想的で神秘的な現象だと知った。いままで自然現象でこんなに感動したことはない。世界中に皆既日食ファンが居るっていう事実もうなずける。


あっという間に皆既日食時間が終わり、月に隠されていた太陽からの光が再び溢れ出す。ラッキーな事に上下両方のダイアモンドリングを撮影することが出来た。
Total Solar Eclipse 2012 at Palm Cove in Cairns Australia


後は徐々に太陽の部分が広がり、あたりが明るく、暖かくなっていく。
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もちろん部分日食中も十分に美しいんだけど、皆既日食中とそれ以外の時間帯とでは、感動具合に雲泥の差がある。部分日食や金環日食を見たことがあるけどまだ皆既日食を見たことがないって人は、機会があればぜひ皆既日食を観測して欲しい。次回日本で皆既日食が見れるのは2035年らしいけど、その際もぜひ見てみたい!と思ったのでした。


ちなみに写真撮影は、たまたま3枚の減光フィルターを姉から借りることが出来た(金環日食撮影用に買ったらしい)ので、それを太陽の光量に合わせて慌ただしく取ったりつけたりして行った。かなり忙しかった。日食の時間はわずかしかないし、現象そのものが貴重なので練習する機会もなくぶっつけ本番。反省点としては、もう一台別のカメラを用意して、広角で日食中の全体の雰囲気を撮りたかったなぁ…ということ。でもまぁ概ね満足っすね。